一年生ライグラス中毒
毒物の所在
雑草の一年生ライグラス(annual ryegrass ,Lolium rigidum) の種子で繁殖する細菌Clavibactor toxicus(かつてはCorynebacterium sp.に属していた)は,コリネトキシンを産生する.
この菌は土壌線虫Anguina funestaによって媒介される.
放牧地や採草地で繁殖する一年生ライグラスがこの菌に感染すると,これを食べた家畜が中毒を起こす.
西オーストラリア州やニュージーランドなどでこの中毒が発生している.
毒性
コリネトキシンは複合糖質生成を阻害.
糖蛋白質糖鎖のうちN-グリコシド糖鎖合成は,種々の糖ヌクレオチドからドリコールリン酸単糖を合成することによって開始するが,コリネトキシンはドリコールリン酸とUDP-N-アセチルグルコサミンから,ドリコールピロリン酸 N-アセチルグルコサミンが形成する過程を阻害する.
コリネトキシンの糖蛋白質合成阻害作用と神経症状との関連については,フィブロネクチンの合成が阻害されて血管の透過性が亢進し,血液脳関門が破壊されると言う仮説が提起されているが,詳細は明らかではない.
中毒症状
初期には歩様異常,起立不能.
症状が進むと後弓反張,遊泳運動.
発作を繰り返し死に至る.
診断
臨床症状.
牧草への一年生ライグラスの混入.
Clavibactor toxicusの増殖した種子の検出(ELISA).
種子からのコリネトキシンの検出(HPLC).
対策
1996年に,オーストラリアから輸入されたオーツヘイに混入していた一年生ライグラスによる中毒が発生した.これ以後,オーストラリアでは,輸出する乾草中のClavibactor toxicus菌体抗原の有無をチェックしており,その後の発生はない.
文献
野川真ら(1997)日本獣医師会雑誌,50巻6号,321-326.
(最終更新:2005.1.11)