キンコウカ

学名:Narthecium asiaticum Maxim.

英名:bog asphodel

北海道から本州中部の高山帯の湿原に多くみられる多年草です.草丈は50-60cm くらいで,7から8月に花茎の上部に鮮黄色の花をさかせます.キンコウカという名前は花の色が黄金色をしているので「金光花」と名付けられたと言われています.キンコウカ属の植物は世界に8種あり,日本固有のキンコウカの他にヨーロッパ原産のN. ossifragumや北アメリカに分布するN. californicum, N. americanumなどが知られています.

1975年に,山形県の1放牧場で若齢乳牛30頭にキンコウカによる中毒が発生し,日本でも家畜にとって毒草であることが知られるようになりました.北ヨーロッパでは,N. ossifragumが放牧されている羊に急性肝炎,黄疸,肝性光線過敏症を起こすことが古くから知られていましたが,1989年北アイルランドで(6),また1992年ノルウェーでN. ossifragum による腎障害を主徴とした牛の中毒が発生し(2),原因物質の特定が進められています.

 

 

有毒成分

キンコウカは多量のポリフェノール化合物,サポニン,その他少量のコルヒチン様化合物を含んでいますが,有毒成分については長い間不明でした.日本の研究者によってキンコウカからフロスタノール型サルササポニンが分離されましたが(4,5),この物質を実験動物に経口投与すると腸炎は起こすものの,キンコウカ中毒の主徴である腎障害はみられませんでした.またN. ossifragum から抽出された同タイプのサポニンは羊に肝性光線過敏症を起こしますが,やはり腎障害は認められませんでした(1).その後N. ossifragum から3-メトキシ-2(5)フラノン(3-methoxy-2(5)furanone)とその類縁物質が分離され,これが腎毒性の原因物質であること,日本産N. asiaticum にもこの物質が含まれていることが判明しました(3).

キンコウカの中毒量は体重200 kgの牛で生草4 - 5 kgです(7 ).

中毒症状

キンコウカ中毒再現試験では,元気消失,食欲廃絶,鼻粘膜の充血,第一胃蠕動微弱ないし消失,心拍の微弱,減数,体温低下などがみられたほか,腹水と皮下の水腫による腹周囲の膨大が観察されました.また末期には血便がみられます(7 ).

ノルウェーでのN. ossifragum による中毒の所見では,沈鬱,食欲不振,メレナ(吐血),血便,下痢などがみられ,血液生化学的所見では,GLDH (グルタミン酸脱水素酵素), AST, CKなどの酵素活性の上昇が報告されています(2).

病理所見

特徴的な所見は,腎の退色および混濁,心の出血です.腎周囲の脂肪組織における著明な水腫および腹水の貯留と皮下の水腫が認められ,中期以降の例では出血性変化が多くみられます.その他,気管,胃,腸,膀胱,筋肉などの諸臓器にも出血性変化が観察されます.組織学的にはネフローゼと内臓諸臓器の出血性変化を主徴としますが,これらのうち腎変化が最も強く,細尿管主部と曲部の上皮の壊死や変性は基底膜に及びます.また管腔内には微細な顆粒性の蛋白様物質や硝子様物質が観察されます.

文献

1) Flaoyen, A. 1996. Do steroidal saponins have a role in hepatogenous photosensitization diseases of sheep. Advances in Experimental Medicine and Biology 405:395-404.

2) Flaoyen, A. et al. 1995. Nephrotoxicity of Narthecium ossifragum in cattle in Norway. Vet. Rec. 137:259-263.

3) Flaoyen, A. et al. 1997. The possible involvement of 3-methoxy-2(5H)-furanone in the etiology of Narthecium asiaticum Maxim. associated nepherotoxicity in cattle. Nord. Vet-Med. 7:329-377.

4) Inoue, T. et al. 1995. Structures of toxic steroidal saponins from Narthecium asiaticum Maxim. Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 43:1162-1166.

5) Kobayashi, M. et al. 1993. Purification of toxic saponins from Narthecium asiaticum Maxim. J. Vet. Med. Sci. 55:401-407.

6) Malone, F.E. et al. 1992. Bog asphodel (Narthecium ossifragum) poisoning in cattle. Vet. Rec. 131:100-103.

7) Suzuki, K. et al. 1985. Narthecium asiaticum Maxim. poisoning of grazing cattle: observations on spontaneous and experimental cases. Cornell Vet. 75:348-365.

 

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最終更新日:2008.7.22  北米分布種の学名のミススペルを修正

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