学名:Datura stramonium L.
英名:thorn apple, Jimsonweed
学名:D. meteloides Dunal
英名:thorn apple, sacred datura
学名:D. inoxia Mill.
学名:D. metel L.
英名:Hindu datura
学名:Datura fastuosa L.
学名:Brugmansia suaveolens
英名:Angel's trumpet
ヨウシュチョウセンアサガオは熱帯アメリカ原産のナス科の一年草で,日本には1879年に渡来したと言われ,広く栽培されまた野生化しています.茎は1m以上に直立して多くの枝を分けます.葉の長さは8〜15cmくらいで,両面とも無毛です.花期は夏から秋で,薄紫か白色のロート状の花をつけます.花が白色のものをシロバナヨウシュチョウセンアサガオと呼びます.果実は広卵形で長さ3cmほどになり,多数のとげがあります.英名のJimsonweedは,イギリス統治時代のアメリカ東部の町ジェームスタウン(Jamestown,現在のバージニア州)に駐屯していたイギリス軍兵士がこの草の集団中毒になったことに由来しています.アメリカチョウセンアサガオは北アメリカ原産で,観賞用に広く栽培されています.茎や葉の下面には微細な毛を密生しています.花はヨウシュチョウセンアサガオより大きく,開くと径10cm以上にもなります.わが国に一番古く伝わったのはチョウセンアサガオです.チョウセンアサガオは熱帯アジア原産で,江戸時代に中国を経由して日本に伝わり,薬草として栽培されました.華岡青洲の全身麻酔手術に使われたことで有名ですが,日本では栽培が難しく,現在では薬草園などでしか見ることは出来ません.
ところで,木本のキダチチョウセンアサガオ(Brugmansia suaveolens)やコダチチョウセンアサガオ(B. candida)が園芸店でエンゼルトランペットなどの呼び名で販売され,家庭で栽培されているのをよく見かけます.Brugmansia属はかつてはDatura属に含まれていましたが,草本のDatura属から分離されました.名前は優しそうですが,エンゼルトランペットも草本のDatura属と同様に有毒ですので注意が必要です.
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ヨウシュチョウセンアサガオ ![]()
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ケチョウセンアサガオ(東京都,11月) ![]()
ヤエチョウセンアサガオ(東京都,花10月,種子12月) ![]()
キバナヤエチョウセンアサガオ(東京都,花8月,種子11月) ![]()
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キダチチョウセンアサガオ(エンゼルトランペット)(青森県,10月)
有毒成分
ヨウシュチョウセンアサガオなどのDatura属の植物は,葉に(-)-ヒヨスチアミン(hyoscyamine)を含みます.ヒヨスチアミンの抽出過程で,側鎖のトロピン酸(tropic acid)の部分がラセミ化したものがアトロピン(atropine)です.ヨウシュチョウセンアサガオの葉はマンダラ葉と呼ばれ,硫酸アトロピンの製造原料となっています.一方,種子には(-)-スコポラミン(scopolamine)を含みます.これらのアルカロイドは,Datura属だけではなく,ヒヨス(Hyoscyamus niger),ベラドンナ(Atropa belladonna),ハシリドコロ(Scopolia japonica)などのナス科の植物にも含まれています.ヒヨスチアミン,スコポラミンそしてアトロピンなどは,トロパン(tropane)骨格を基本としていることから,トロパンアルカロイドと呼ばれることがあります.
アトロピンやスコポラミンは代表的なムスカリン拮抗薬で,ムスカリン受容体へのアセチルコリンの結合を競合的に拮抗することにより,副交感神経興奮遮断作用を示します.アトロピンとスコポラミンの薬効差は少なく,動物種差も少ないと言われています.治療量では中枢作用をほとんど示さず,頻脈,散瞳,唾液分泌や胃運動の低下などがみられます.大量に摂取すると中枢神経系の興奮をきたします.同時に,筋緊張の支配能力が低下するため,運動協調不全が認められます.
検査法
食品中のトロパンアルカロイドの公定分析法では,薄層クロマトグラフィー法による定性試験法およびガスクロマトグラフィー法による定量分析法が使われており(衛生試験法・注解),家畜中毒の診断にもこれが応用できます.また,キャピラリー電気泳動法によるトロパンアルカロイドの分析も報告されています(2).
中毒症状
中毒症状としては,一般的なアトロピン中毒症状である,頻脈,散瞳,唾液分泌や胃運動の低下などがみられます.中毒による胃アトニーにより採食量が減るため,自動的にそれ以後のチョウセンアサガオ摂取が抑えられるので,死に至ることはほとんどありません.牛の場合,第一胃液のVFA濃度が上昇すると言われています(3).トロパンアルカロイドに対する感受性は豚が一番高く,牛,馬,ニワトリの順に感受性は低くなります.豚では,飼料中アルカロイド濃度が1.5mg/kgまでは中毒の心配はないと報告されていますが(4),ニワトリでは飼料中のアルカロイド濃度が75mg/kgまでは異常が現れません(1).
病理所見
肉眼的には,肺の充血と水腫,胸水の貯溜,髄膜の充血および脳室の拡張が観察されます.また,脳,胃および小腸などに窒息の特徴所見である点状出血が認められます.
文献
1) Kovatsis, A. et al. 1994. The influence of Datura ferox alkaloids on egg-laying hens. Vet.Hum.Toxicol. 36: 89-92.
2) Mateus, L. et al. 1998. Capillary electrophoresis for the analysis of tropane alkaloids : pharmaceutical and phytochemical applications. J. Pharm. Biomed. Anal. 18:815-25
3) Nelson, P.D. et al. 1982. Jimson weed seed toxicity in cattle. Vet.Hum.Toxicol. 24: 321-325.
4) Piva, G. and Piva, A. 1995. Anti-nutritional factors of Datura in feedstuffs. Nat. Toxins 3: 238-241.