学名:Hydrangea macrophylla (Thunb. ex Murray) Ser. f. macrophylla
英名:Japanese hydrangea
アジサイは広く庭園などで栽培されているユキノシタ科の落葉低木で,梅雨時に特徴的な花を咲かせます.大平洋岸で自生しているガクアジサイが原種で,鎌倉時代に日本で園芸種として育成され,江戸時代にはすでに一般的な庭園植物となっていたそうです.中国へはかなり古くに伝わり,ヨーロッパへは,中国を経由して導入されました.シーボルトはアジサイの学名をHydrangea otaksaと名づけましたが,これはシーボルトの愛人だった長崎の遊女お滝さんに由来するそうです.
有毒成分
有毒植物に関する単行書等にアジサイの葉は青酸配糖体を含むという記載があったため,本ウェブサイトでもそのように記載してきました.また,厚生労働省の課長通知(平成20年7月1日付け)でもそのように記載されていました.しかし,下記のつくば市での中毒を機に,「アジサイの葉に含まれる青酸配糖体」に関する原著論文を検索しましたが,現時点では見つかっていません.
下記の文献(1)および茨城県つくば市でのヒトの食中毒事例のように,アジサイが中毒を起こすことは確かだと思いますが,その原因物質は青酸配糖体ではないようです.
厚生労働省の課長通知も,青酸配糖体が含まれているという事実が確認できないことから,8月18日付けで修正版が出ています.
アジサイの葉に含まれる有毒物質に関する情報を収集中です.有用な情報が入り次第,本ウェブサイトを更新します.
なお,アジサイの葉に含まれる青酸配糖体を"hydrangin"であると記載した単行書やウェブペイジが数多くありますが,アジサイの根から単離されたhydranginは,C9H6O3という化学式で,窒素を含まず(-CNが無い),7-hydroxycoumarinと同一物質であるという論文があります(2).
最近,アジサイの葉や茎から新規の青酸配糖体を単離したとの論文報告がありました(3).Hydracyanoside A, B およびCと命名された新規の青酸配糖体が,アジサイの葉や茎から見つかったそうです.最も多く含まれるhydracyanoside Aの葉での濃度はおよそ0.09%だそうです.今後は,この濃度で中毒が起きるかどうかの検証が必要です.
中毒症状
1920年にアメリカで馬および牛のアジサイ中毒の報告があります.これによれば,動物は下痢,体温上昇,呼吸数および心拍数の増加,骨格筋の強い収縮などがみられ,山羊のように足を突っ張って飛び上がったりしましたが,対症療法を施したところ死亡せずに回復しました(1).
文献
1) Bruce, E.A. 1920. Hydrangea poisoning. J.Am.Vet.Med.Assoc. 58: 313-315.
2) Palmer, KH. 1963. The structure of hydrangin. Can. J. Chem. 41: 2387-2389.
3) Nakamura, S. et al. 2009. The absolute sereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanoside A, B, and C, from the leaves and stems of Hydrangea macrophylla. Tetrahedron Letters. 50:4639-4642.
2008年6月に,飲食店の料理の「ツマもの」として添えられていたアジサイの葉を食べた方々が,嘔吐,吐き気,目眩等の中毒症状を起こしました.中毒を起こした方々全員がアジサイの葉を食していたこと,アジサイの葉を食べなかった同席者は無症状だったことから,保健所はアジサイの葉による中毒と断定しました.料理に添えられていたのは,料理店の敷地内に生育するアジサイの若葉で,一皿に2枚添えられていたそうです.この食中毒事故に関する茨城県のプレスリリースはこちらです.
上述のように,アジサイの葉に含まれる有毒物質については不明な点が多いのですが,つくば市の事例では疫学的にアジサイの葉の関与が強く疑われますので,注意が必要です.
2008.9.22 厚生労働省の課長通知の修正版が出たこと(アジサイに青酸配糖体が含まれていることが確認できなかったことによる修正)を記載.
2008.7.25 アジサイの葉中毒の原因は青酸配糖体ではない可能性が高いことをふまえた修正.
参考のため,更新前のペイジ(2008.7.7版)をこちらに保存しています.