オトギリソウ

学名:Hypericum erectum Thunb. ex Murray

オトギリソウは日本全土の山地に生える多年草で,草丈は30〜60cmほどになります.葉は長楕円形で,下面から透かすと黒色の小さい点が散在しています.8月頃2cmほどの花が枝先に咲きます.花山天皇の頃に名をはせた鷹匠の晴頼が,鷹を治療するための薬草を秘密にしておいたのに,弟がこれを漏らしてしまったので切り捨てたという故事から弟切草の名がついたと言われるように,古くから薬草として用いられていたようです.煎汁には止血,収斂作用があると言われています.漢方では全草を天日乾燥したものを小連翹(しょうれんぎょう)といい,この煎汁あるいはアルコール抽出液の湿布や塗布が神経痛やリューマチの薬として用いられます.ヨーロッパでは中世から聖ヨハネの日(6月24日)に薬草を集める風習があります.イギリスでは薬草として用いられるセイヨウオトギリ(H. perforatum)が聖ヨハネの日の頃に黄色い花をつけることから,これを St. John's-wort (聖ヨハネの草)と呼んでいます.

オトギリソウの仲間は,上述のように葉を透かしてみると油滴のような斑点が見えること,葉のつき方が十字対生(2枚の向き合った葉が90度ずつずれている)であることで,他の植物と区別できます.

 

 

有毒成分

オトギリソウは,光作用性物質(photosensitizer あるいは photodynamic compounds)であるヒペリシン(hypericin)を含んでいます.ヒペリシンは可視光やUVAで活性化され,セミキノンラジカル,一重項酸素,スーパーオキシドアニオンを発生します.これらのラジカルが種々の生体反応を引き起こすと考えられています.

また,ヒペリシンにはin vitro で抗レトロウイルス作用があるといわれるため,エイズ治療薬としての臨床試験が行われましたが,副作用としての皮膚炎が観察されたのみで,抗レトロウイルス作用はみられませんでした(3).

検査法

生体成分中のヒペリシンは,高速液体クロマトグラフにより分析できます(2,5).植物あるいは胃内容中のヒペリシンについても,しかるべき前処理を行えばHPLCで定量できると思われます.また,植物から抽出したヒペリシンをペーパークロマトグラフィーなどで精製し,吸収スペクトルによる物質の同定と,分子吸光係数による定量を行う方法も応用されています(6).

中毒症状

オトギリソウを摂取した動物が強い太陽光線を浴びると,発生したラジカルによって皮膚炎を起こします.皮膚炎は鼻鏡のような無毛部や,体毛が白色な部位に発生し,黒色部には起こりません.河田らの再現試験(6)では,給与24時間後にはすでに鼻鏡や皮膚の発赤がみられ,4日後に皮膚病変が現れたと報告されています.血液生化学所見では,ALT,AST,CK,LDH,GGT活性の上昇がみられたとの報告(4)もありますが,著変はなかったとの報告(1)もあり一定していません.

文献

1) Araya, O.S. and Ford, E.J.H. 1981. An investigation of the type of photosensitization caused by the ingestion of St. John's wort (Hypericum perforatum) by calves. J. Comp. Pathol. 91: 135-141.

2) Chi, J.D. et al. 1999. Determination of hypericin in plasma by high performance liquid chromatography. J. Chromatogr. B Biomed. Sci. Appl. 724: 195-198.

3) Gulick, R.M. et al. 1999 Phase 1 studies of hypericin, the active compound in St.John's wort, as an antiretroviral agent in HIV-infected adults. AIDS clinical trials group protocol 150 and 258. Ann. Intern. Med. 130: 510-514.

4) Kako, M.D.N. et al. 1993. Studies of sheep experimentally poisoned with Hypericium perforatum. Vet. Hum. Toxicol. 35: 298-300.

5) Liebes L. et al. 1991. A method for the quantitation of hypericin, an antiviral agent, inbiological fluids by high-performance liquid chromatography. Anal. Biochem. 195: 77-85.

6) 河田治茂ら 1980. オトギリソウに起因する牛の光線過敏症.日獣会誌 33: 372-375.

 

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最終更新日:2009.2.6 他の植物との見分け方の記載を追加

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