レンゲツツジ

学名:Rhododendron japonicum (A.Gray) Suringar

高さ1〜2mくらいのツツジ科の落葉低木で,北海道西南部・本州・四国・九州の広い範囲に分布しています.ふつう日当たりのよい高原などに自生しますが,園芸樹としても植えられます.4〜6月に葉がでた後,直径5cmほどの大きなロート状の花をつけます.花の色は朱赤色ですが,南へ行くほど黄色味が増します.しばしば大群落を作り,草原や,湿原の初夏を彩る花として有名です.

ツツジ科は103属3350種が含まれる大きな科です.特にツツジ,シャクナゲを含むツツジ属は850種あり,その多くが園芸植物ととして栽培されています.またこの属では比較的容易な異種間人工交配によっておびただしい数の園芸種が作出されています.ツツジ科植物の有毒性は古くから知られており,紀元前4世紀のギリシャの哲学者クセノフォンはその著書のなかで兵士たちが ツツジ属植物やハナヒリノキ(Leucothoe grayana)の蜜に由来する蜂蜜で中毒した様子を記録しています.最近でもトルコでツツジ属の花からとった蜂蜜を食べ,ヒトの中毒事故が起きているとの報告があります(8).

有毒成分

ツツジ科の植物にはジテルペン構造を持つグラヤノトキシン(grayanotoxin) I 〜 III などの有毒物質が同定されています.グラヤノトキシンの名は,これが最初に同定されたハナヒリノキの学名Leucothoe grayana に由来します.このうちグラヤノトキシンI はアンドロメドトキシン(andromedotoxin)ともよばれています.またレンゲツツジから抽出されたロードトキシン(rhodotoxin),アセビから抽出されたアセボトキシン(asebotoxin)もグラヤノトキシンI と同一物質です.

グラヤノトキシンは細胞膜上のナトリウムチャンネルに結合し,これによって細胞は興奮状態と脱分極状態を持続して,容易にカルシウムの流入が起こります.その結果,骨格筋や心筋の収縮力を高め,期外収縮などを起こします(7).

上述のように,ツツジ科には多くの種類があり,また園芸用として作られた交雑種も非常に多い植物です.その上,個々の種の有毒物質含量は大きく異なります(7).したがって中毒量の決定は難しいのですが,ネジキの場合,牛では体重の1%の摂取で死亡すると家畜有毒植物学には記述されています.またアセビでは,山羊の場合,体重の0.1%の摂取で中毒が起きます(5).

検査法

第一胃内容物のグラヤノトキシン同定法として,薄層クロマトグラフィーを用いた方法が報告されています(2, 3, 4).

中毒症状

グラヤノトキシンは,はじめ迷走神経を刺激し,後でこれを麻痺させます.採食後数時間で発症し,嘔吐や泡沫性流涎を起こし,軽症では,沈衰,四肢開張,蹌踉,知覚過敏となります.また重症では,四肢の麻痺,起立不能,さらに間歇性の疝痛,腹部膨満,呼吸促迫,脈の細弱不整,そして全身麻痺に陥る場合もあります.ただし回復は早く,致命率は高くありません.

病理所見

一般に激烈な胃腸炎を認めます.皮下血管の怒張,胃腸粘膜ならびに心筋に出血斑,また腎髄質部に軽度の充血がみられます.脳および軟脳膜面は顕著な充血を示します.

 

文献

1) Hollands, R.D. and Hughes, M.C. 1986. Pieris formosanum poisoning in the goat. Vet. Rec. 118:407-408.

2) Humphreys, D.J. and Stodulski, J.B. 1986. Detection of andromedotoxins for the diagnosis of Rhododendron poisoning in animals. J. Appl. Toxicol. 6:121-122.

3) Humphreys, D.J. et al. 1983. Rhododendron poisoning in goats. Vet. Rec. 113:503-504.

5) Plumlee, K.H. et al. 1992. Japanese pieris toxicosis of goats. J. Vet. Diagn. Invest. 4:363-364.

6) Power, S.B. et al. 1991. Pieris poisoning in sheep. Vet. Rec. 128:599-600.

7) Spoerke, DG. 1990. Grayanotoxines. In Toxicity of house plant. (CRC press) p25-27.

8) Sutlupinar, N. et al. 1993. Poisoning by toxic honey in Turkey. Arch. Toxicol . 67:148-50.

 

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最終更新日:2003.11.1

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